
高齢者が熱中症になりやすい理由とは?知っておきたい身体の変化と対策
夏になると、熱中症で救急搬送される高齢者のニュースを目にします。7月に入ってからすでに高齢者の死亡のニュースも取り上げられています。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250711/k10014860861000.html
実際に、熱中症による救急搬送者の約半数が65歳以上の高齢者であることが統計でも示されています。なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか?その理由を詳しく解説します。
高齢者の身体に起こる変化
1. 体温調節機能の低下
加齢とともに、体温を調節する機能が徐々に低下します。具体的には以下のような変化が起こります:
- 発汗機能の低下:汗腺の働きが衰え、汗をかきにくくなります
- 血管の反応性低下:皮膚の血管が拡張しにくくなり、体熱の放散が困難になります
- 体温調節中枢の機能低下:脳の視床下部にある体温調節中枢の反応が鈍くなります
2. 水分調節能力の変化
高齢者は若い人に比べて、以下の理由で脱水状態になりやすくなります:
- 体内水分量の減少:筋肉量の減少により、体内の水分貯蔵量が少なくなります
- 腎機能の低下:水分や電解質のバランスを調整する腎臓の機能が衰えます
- のどの渇きを感じにくい:脱水状態でも渇きを感じにくくなります
3. 暑さに対する感覚の鈍化
年齢を重ねると、暑さや寒さを感じる感覚が鈍くなります。これにより:
- 室内が高温になっても気づきにくい
- 適切な服装調整ができない
- 冷房の使用を控えてしまう
生活環境による要因
社会的孤立
一人暮らしの高齢者は、体調の変化に気づいてくれる人がいないため、熱中症のリスクが高まります。また、節電意識が強く、エアコンの使用を控える傾向もあります。
持病や薬の影響
多くの高齢者が服用している薬剤(利尿薬、降圧薬など)は、体内の水分バランスに影響を与え、熱中症のリスクを高める可能性があります。
住環境
古い住宅では断熱性が低く、室内温度が上昇しやすいことも要因の一つです。
高齢者の熱中症予防のポイント
1. こまめな水分補給
- 1日1.2〜1.5リットルの水分摂取を目安に
- のどが渇く前に水分を取る習慣をつける
- アルコールやカフェインは利尿作用があるため、水分補給としては不適切
2. 適切な室温管理
- 室温28度以下、湿度60%以下を保つ
- エアコンや扇風機を適切に使用する
- 寝る前も冷房をつけたまま就寝する
3. 服装の工夫
- 通気性の良い素材を選ぶ
- 明るい色の服を着用する
- 帽子や日傘を活用する
4. 外出時の注意
- 日中の暑い時間帯(10時〜16時)の外出は避ける
- 涼しい場所での休憩を心がける
- 体調に異変を感じたらすぐに涼しい場所へ移動
家族や周囲ができるサポート
定期的な安否確認
一人暮らしの高齢者には、家族や地域の人が定期的に連絡を取り、体調を確認することが重要です。
環境整備の支援
エアコンの設置や修理、適切な水分補給のための買い物支援なども効果的です。
緊急時の対応方法の共有
熱中症の初期症状(めまい、頭痛、吐き気など)を見逃さず、迅速に対応できるよう、家族間で情報を共有しておきましょう。
まとめ
高齢者が熱中症になりやすいのは、加齢による身体機能の変化が主な原因です。体温調節機能の低下、水分調節能力の変化、暑さに対する感覚の鈍化などが重なり、熱中症のリスクが高まります。
しかし、適切な知識と対策があれば、熱中症は予防可能です。高齢者本人はもちろん、家族や周囲の人々が協力して、安全な夏を過ごすための環境を整えることが大切です。
暑い夏を健康に乗り切るために、今日から熱中症対策を始めてみませんか?